Q、遺産分割協議書の〆の文章は?

遺産分割協議書には、遺産の中で些細な価値しか無い物の帰属、また、後日遺産の存在が判明した場合に備えて、最終条項として対応を明記しておくことがよくあります。

この条項がない場合は、後日判明した遺産については、改めて遺産分割協議を行い、その財産の帰属を決める事となります。

本来の目的は、少額な遺産が発見された際に、いちいち再度の協議を避ける意味合いで設けられる条項といってよいでしょう。

 

代表的な例をいくつか挙げてみます。

 

①第○条

本協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については、相続人○○が相続し、または承継する。 

 

②第○条

本協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については、相続人全員が法定相続分に従い相続する。 

 

③第○条

本協議書に記載なき遺産並びに後日判明した遺産については、相続人○○が持分2分の1、相続人△△が持分2分の1の割合で相続する。 

 

④第○条

 本遺産分割協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人〇〇がこれを取得する。但し、遺産を取得する代償として、各相続人に対し法定相続割合相当額の代償金を支払う。

 

⑤第〇条

 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産の価格が金100万円以下のときは、相続人○○がこれを取得し、その価格が金100万円を超えるときは相続人全員がその財産の帰属について再度協議を行うこととする。

 

⑥第〇条

 本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産は、相続人全員がその財産の帰属について再度協議を行うこととする。

 

①と⑥のケースを実務ではよく見かけます。

 

①のケースは相続人間に争いの無い、財産もそう多くない、父が亡くなって母が全て相続する分には子供たちの間に異存はない、長男で親の面倒も看てきたのだから異存はない、といった感じの、いわば平穏な相続に選択される文章であると言えるでしょう。

私も遺産分割協議書作成の際に相談を受け、諸般の事情を聞き取り、平穏な相続であると思われるときは、①の文案をお勧めしております。

では、①の文案で「本協議書に記載なき遺産」として後日、不動産が出てきたときに、この遺産分割協議書のままで登記まで出来るのか?疑問に思われるでしょう。答えは「遺産分割協議書に記載のない不動産でも登記出来る」のです。

なぜなら、通常、遺産分割協議書には不動産の表示を登記簿通り記載することが当たり前のようになっていますが、これは絶対的な要件ではありません。

例えば、包括的な財産の帰属を定めた遺産分割協議書を作成する場合、「被相続人〇〇の遺産は全て△△が相続する」との一文だけの物でも、遺産に不動産がある場合、全ての不動産に対して△△名義に相続登記をすることが出来ます。

遺言書で「私の財産全てを妻〇〇に相続させる」と書いた場合と同じく、財産の詳細が書いていなくとも「全て」は「全て」なのだと法的にも解釈します。

実際①の条項で救われるケースはよくあります。遺産分割協議書には自宅土地建物の表示が登記簿通り記載されているが、道路持分について記載が漏れている、といった事はご本人で遺産分割協議書を作成すると起こりがちなミスなのですが①の条項で救われ、他の相続人から印鑑貰い直しの憂き目に合わず済みます。

ですが、①の文案は良い事ばかりかというとそうではありません。

上に書いた事を悪用する相続人がいるかもしれません。

財産を隠したまま①の文案で登記までされてしまうかもしれません。

例え「本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産」が高額な不動産であったとしても法務局は書面審査権に基づき登記をするだけです。

高額な財産を隠したまま遺産分割協議を成立させられたなら、錯誤による無効を主張は出来るでしょうが、それは別問題です。

平穏な相続以外では①の文案はリスクも伴うのだとご認識ください。

 

 

②以降はリスクを軽減する術も含まれ、⑥になるとフェアであるというか、お互い信頼できないものか、とも見えなくはないですが、争いを避ける意味ではこれはこれで、といった所です。