Q、相続手続きで要求される戸籍の範囲は?

 

 相続の手続きには戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要になる事は一般的に知られている事かと思います。

基本的には亡くなった方について、出生から死亡まで、切れ目ない戸籍を収集する必要が有ります。

相続人の側は、相続人全員が現在の自分の戸籍を持ち寄ります。

その際、亡くなった方の配偶者の戸籍は亡くなった方の死亡記載のある戸籍と同じ物になりますので1通で事足ります。併せて結婚していない子供も同じ戸籍に記載がされていますので、その場合、亡くなった方の死亡記載ある戸籍・配偶者の戸籍・結婚していない子供の戸籍として1通の戸籍謄本を取得すればよいことになります。

後は、亡くなった方の出生に遡る戸籍を集めるだけです。戸籍も集めてみると費用も結構かかり、出生に遡る戸籍を集めるのも大変です。

こうして集めた戸籍のフルセットが1セットあれば順番に登記預金解約その他の手続き、というように使いまわせます。

 

 不動産を相続する場合、遺言書が無い場合は法定相続分で登記するか、別途、遺産分割協議をおこなって登記しますが、必要となる戸籍謄本類は被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の現在の戸籍(今回これをフルセット戸籍と言います)が必要です。集めた戸籍の原本は相続関係説明図を法務局に提出する事で戻って来ますので、その後の金融機関の手続きや相続税の申告等に使い回すことが出来ます。

 遺言書がある場合はと言うと、自筆証書遺言では、家庭裁判所に検認を申し立てる際にフルセット戸籍が必要となります。理由として家庭裁判所は検認期日を相続人全員に知らせ、相続人に立会う機会を与える必要が有るからです。
検認終了後に法務局に対し登記申請となる訳ですが、ここでまた戸籍謄本が必要になります。しかしフルセット戸籍で無くても良いのです。被相続人の死亡の記載のある最後の戸籍と不動産の名義を取得する相続人の現在の戸籍(今回これをライトセット戸籍と言います)で足ります。家庭裁判所に検認を申立てる際にフルセット戸籍のコピーを原本と共に提出して戸籍の原本還付を受けていればフルセット戸籍が手元に残ります。こうすることで新たにライトセット戸籍を登記用に揃える必要も無く経済的です。

 次に公正証書遺言の場合はどうかと言うと、生前に公証役場で遺言書を作成する際にライトセット戸籍が必要です。(遺言者の現在の戸籍と財産を得る相続人の現在の戸籍が必要)そして、遺言者が亡くなった際には公正証書遺言では家庭裁判所の検認手続きが不要な為、フルセット戸籍を集める必要はありません。公正証書遺言の場合は続く法務局に対する登記申請でもライトセット戸籍のみで事足ります。結果、公正証書遺言がある場合は被相続人の出生に遡る戸籍を一度も集めることなく、ついでに言うと財産を取得しない他の相続人の戸籍についても1度も集める事なく登記まで可能です。