Q、遺言書による遺留分減殺請求の方法を指定できる?

Q 

私は、「全財産を内縁の妻に遺贈する」という内容の遺言書を書くつもりですが,私には離婚した元妻との間に子供が一人います。そうなると,私の死後に,子供から内縁の妻に対し遺留分減殺請求がなされると思います。
これに対処する遺言書の書き方はありますか?

 

A 
 離婚後、諸般の事情で子供と音信不通に陥り、18歳迄の養育費の振込先だけが唯一の繋がりといったケースをよく耳にします。

離婚後数十年、元妻を含め子供の住所も、連絡先さえもわからない状態で、内縁の妻に全ての財産を渡したいといった場合、遺言書を作成するには「遺留分減殺方法の指定」を盛り込んでおくとよいでしょう。

遺言書で相続人の遺留分を侵害した場合,遺留分権利者から遺留分減殺請求がなされると,相続財産の全てについて,受遺者(「相続させる」遺言を含む)と遺留分権利者との間で共有になります(最高裁平成8.1.26判決)。「共有になる」という事が非常に厄介な問題を生みます。内縁の妻の住まいとなっている不動産についても共有とされてしまうのです。
 これを避ける方法として,遺言者は,遺言で,「遺留分減殺順位の指定」をすることができます(民法1034条但し書)。

内縁の妻の住居を確保しつつ、預金などの現金化し易い財産から遺留分減殺請求の引き当てにする対策を遺言書内で取ることが出来ます。

<遺留分減殺方法の指定をする遺言書記載例>

 

                遺言書

 

遺言者〇〇は、次のとおり遺言する。

 

第1条 私の相続開始時に有する、下記財産を含む遺産の全てを内縁の妻〇〇(住所□□ 昭和 年 月 日生)に遺贈する。

 

(1)土  地              

   所  在  相模原市南区上鶴間二丁目 

   地  番  〇〇番〇〇 

   地  目  宅地

   地  積  123.45㎡

 

(2)建物

   所  在  相模原市南区上鶴間二丁目〇〇番地〇〇

   家屋番号  〇〇番〇〇   

   構  造  木造スレートぶき2階建

   床 面 積  1階 50.00㎡

         2階 50.00㎡

 

(3)上記家屋内の什器、備品一式

 

(4)〇〇銀行〇〇支店 普通預金(口座番号1234567)

 

(5)株式会社〇〇 株式  1万株

 

(6)10年利付国債(平成 年 月 発行)額面100万円

(〇〇証券〇〇支店保護預)

 

 

第2条 将来他の相続人から遺留分減殺請求がなされたときは、この遺言書の第1条に記載した、(6)(5)(4)の財産の中から、この順序に従い減殺するものとあらかじめ指定する。

 

第3条 私は、本遺言の遺言執行者として、前記〇〇を指定する。

 

 平成  年  月  日

  

              (住所) 

               遺言者   〇〇  印