財産分与の税務

夫婦が離婚する際の財産分与では、財産を渡す側に税金がかかることがあります。

 

分与する財産が不動産で、不動産の価値が取得時よりも値上がりしている場合です。財産分与であっても税務上、渡す側には時価で売却したとみなして譲渡所得税が課税されます。あくまで値上がりしている不動産を財産分与する場合の話です。

 

この税負担を抑える方法が2つあります。

 

まずは「居住用財産の譲渡所得の特例」居住用家屋の3,000万円控除といわれるものです。

この特例は、自分が居住している住居を売却した時、3,000万円までを譲渡所得から控除できるというものですが、渡す側が離婚前に別居していると自分が居住している住宅に当たらなくなる為、特例は受けられません。

 

また、この特例は自宅以外の不動産に適用できないことに加え、夫婦間や親子間の譲渡には適用されない、つまりこの特例は離婚後にしか使えないことになります。元々財産分与は離婚後に効力を発生するので、値上がりしている不動産を「財産分与」を原因として移転する場合は3,000万円控除の適用の有無に注意する必要があります。

一方、財産分与で財産をもらう側には原則、税金(贈与税)はかかりません。離婚による財産分与は「夫婦共有財産の清算や離婚後の生活保障であって、金品の贈与ではない」と税務上考えられています。ただし、もらった財産が多過ぎたり、脱税目的で離婚を偽装したりした場合は、財産をもらった人に贈与税がかかります。

 

 

2つ目の税負担を抑える方法として考えられるのが「贈与税の配偶者控除の特例」で、20年以上婚姻実績ある夫婦間で住宅を譲り渡す際に2,000万円までを非課税とし、通常の暦年贈与の非課税枠と合わせて2,110万円まで贈与税がかからない特例です。

 

こちらは配偶者でなければ適用されない為、離婚後には使えません。この特例は自宅をもらう側はもちろん、自宅を渡す側にも税金がかからないというメリットがあります。前記の3,000万円控除が使えない場合などに利用を検討してもよいでしょう。離婚届提出前に自宅の名義を「贈与」を原因として移転することになります。なお、この特例は同じ配偶者とは一生に一度しか利用できません。また自宅をもっらた側は住み続ける必要があります(もらった後にすぐに売ってはいけません)。

 

 

最後に、離婚を機に自宅をもらった側が、数年後に自宅を売却することとなった場合の取得費について簡単に述べておきます。財産分与で取得した場合は財産分与時点の時価にて取得したものとされ、夫婦間「贈与」で取得した場合は贈与者の取得費を引き継ぐことが原則となります。